ただいま決められた通りに演奏しております・・・。

音色の善し悪しについてみんな自分なりに考えが有って、その音を出しているんだと思います。


良い音の定義って何だろう?と聞かれたら僕は
「聞いていて(一緒に演奏していて)気持ちが良い音」、「思わず振り向いてしまうような音」の2つがパッと思い浮かびました。


1つ目の気持ち良い音とは、そのまんまの意味ですが聞いていてリラックスできること、これはずーっと聞いていたいような気分にさせられるような音色を指します。
2つ目は、例えばスタジオで楽器の試し吹きでププーって吹く瞬間、その1音だけで面白さや魅力があって、ハッとして思わず振り向いてしまうような、とにかくこちらを気になる気分にさせるようなそんな音色を指しています。


有る程度の経験とキャリアを積んだ音楽家は、その人の内側に秘めているエネルギーがそのまま楽器を通して音に成って出てくる。
と僕は思っているのですが、これは技術やテクニック、練習の量とは別の問題で、人間の面白さみたいな部分な気がします。

人を引きつけるような話し方が出来る面白さの有る人はやはり演奏にもそう言う要素が凄く有るし
そうじゃない人はそれなりにって場合が多い。
音色の事で面白いのは、音に存在感や何かが有る人は、音程やニュアンスが変だったりしても何故かかっこいいし
他の音と混ざった時にちゃんとサウンドするのですが(純正調で綺麗なハーモニーに成るって言うクラシック的な考えとは違いますが)
逆にどんなに音程が合っていても全然サウンドしない人もいて、チューナーで合っていても本当の意味では合っていない・・・。


でも結局、音程の話しじゃなくて、音色の問題・・・、
いや本人のエネルギーの問題なんじゃないかなと思います。
その人の内側のエネルギーが楽器を通して表現されているんだと思います。
実感として、サックスや管楽器はホントに喋り方や声と近い物が有って
自分の演奏がドンドン普段の喋り方と同じに成って来ている気がするし、この先ももっと近づいて行くんだと思います。


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もう1つ柔軟性について思うのは、音色の柔軟性と言う事じゃなく。

家で1人で機械と向き合いコツコツ音楽を作って1人で活動(インターネットで配信していたり)、他の人と演奏する機会の極端に少ない人がここ最近増えて来て、
そういう人と一緒に演奏すると音楽の柔軟性について考えてしまいます。

というのも、特にリハやライブの演奏の時に感じるのが
一緒に演奏してお互いが出した音に反応し合っていわゆるインタープレイがおこり演奏が発展していく。と言うのがコミュニケーションだし音楽を演奏するのも作る上でも当たり前だと思っているのですが、

あまり人と一緒に演奏する機会の無い音楽家との演奏で感じる事は
相手の音を聞いて反応し合えるような柔軟性が無くて、いかにもカラオケに合わせて演奏しているような気分にさせられる事が有ります。

こっちが出した音に何のレスポンスも無く、ひたすら決められた通りに我が道をひたすら行く感じで演奏する・・・。
もし反応出来る演奏技術がなくて反応出来ない(したいけど技術的に出来ない)のであれば、
何かをしようとしてもがいている事くらいはこちらにも判るのですが。
そうではなくて、自分の演奏にしか目がいってない感じとでもいいましょうか。

そんな時に演奏していて頭に浮かぶのはサポートセンターへの電話。
「ただいまこみ合っております・・・」というあの自動音声。


「ただいま決められた通りに演奏しております・・・。あなたが何を吹こうとも動じません・・・。」みたいな心の声が聞こえてきそうです。

いや、もし断固として自分は決められた通りに演奏する、動じない!!って信念を持っているなら、もっと違ったやりとりに成るはずなんですが。
そこまでの意志もなく何となく考えるのを放棄しているような、こちらの演奏をはたしてどう聴いてくれているのか判らない、みんなで何かを作ると言うエネルギーがあまり無いのか?

「ただ(いま)決められた通りに演奏しております・・・。あなたが何を吹こうとも動じません・・・。」

僕はお互いが反応し合えるような人達と演奏をしていきたいんだなっていう考えが、最近よりはっきりと明確になってきたような気がします。


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そう言えば神林大地くんが日記の中で
茨木のり子 自分の感受性くらい と言う詩を紹介していました。
ぱさぱさに乾いてしまわないようにしなくちゃ。